えがないえほん FREE

2018年01月22日 10時00分

「えがないえほん」B J ノヴァク:著/大友剛:訳(早川書房)

 「絵本」というのは、文字通り「絵がある本」であるはずですよね。にもかかわらず、本書は「えがない」と書いてあります。
 「いやいや、そうは言っても本当はあるんでしょ」と思われる方がいるかもしれません。しかし、その「期待」は、見事に裏切られます。本書には、本当に絵がないのです!

 では、絵がないのに、絵本として成立させるにはどうしたらいいのでしょう。
 本書の著者は、そのために、まず読者をこの本のルールに引きずり込むことを考えたようです。最初の数ページは、見開きの右ページにのみ文字がある構成(つまり左ページは空白)で、なんと6ページも使って、次のような文章を投げかけてきます。

この ほんには
えが ありません

えが ない
えほんなんて
おもしろくないよね

きっと
タイクツで
つまらないよね?
でも、まず……
この本のルール この3見開きが終わったあと、左の写真のページが出現します。
 「なるほど、声に出すと面白い言葉が書かれているのだなと承知して読み進めると、確かに奇妙なオノマトペやお話?が続いています。
 「ははあ、こういう言葉が並んでいる本なのね」と、読者が安心すると、今度は次のようなページが出現します。

「うた」を歌う宣言

 さて、このページをめくると、どうなっているでしょうか。それは、ぜひ本書をご覧ください。
 本書の帯には大勢の子供が爆笑している写真が掲載されています。「読み聞かせで子どもが大笑い」というコピーを添えて。つまり本書は、独りで読むよりみんなで声に出して読む本なのです。そうして声に出すうち、一人一人の頭の中に、確実に何らかのイメージが描かれることでしょう。それが本書の言う「え」です。そうした「え」を紡ぎ出す「えほん」なのだということがわかります。
 電子書籍が主流になるといわれている今ですが、こうした本の「使い方」は、やはり紙の本にしかできないでしょう。そういう意味でも提案性の高い一冊です。教室に備えていただくと、教室に笑い声が響くのではないでしょうか。

 本書の版元は、翻訳ミステリーで有名な早川書房です。多くの翻訳者とのコネクションがあるおかげなのか、本書の魅力はその翻訳にあります。すばらしい翻訳です。本書で使われている、奇妙なオノマトペや「なっとう」などは、原典ではどうなっているのか興味が沸いてきます。原文付きのバージョンも出して欲しいなあと思いました。

お役立ちポイント:★★★☆☆
※このポイントは、学校教育との直接の関わり度合いを示しています。本の善し悪しを示しているものではありません。

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