想像力のスイッチを入れよう FREE

2017年03月13日 10時00分

「想像力のスイッチを入れよう (世の中への扉)」下村健一:著(講談社)

 本書のタイトルと同名の教材が、教科書(光村図書発行平成27年度版小学校国語教科書5年銀河)に掲載されています。ここで言う「想像力」という言葉は、教科書のそれと同じです。メディアから送られてくる情報を受け取る場合、目の前にある事象を説明するために情報を発信する場合に必要となる「想像力」。それには、どんなものがあり、どうすれば身につくのでしょうか。本書は、子供たちと一緒に、授業形式で実践的に書いています。
 下村さんはまず、想像力には次の3種類があると言います。

  • 他者に対する想像力
  • 情報に対する想像力
  • 未来に対する想像力
これらの想像力について、理屈で示すのではなく、実際に下村さんが小学校に出向いて、子供たちと授業のようなやりとりをする中で考えていく、という形式になっています。
 子供たちとの「授業」も、教室で行うわけではありません。基本的には外へ出て想像力を膨らませて話し合うという形式。先生方がご覧になると「これは少人数だからできるんだよ」とお感じになるかもしれません。しかし、ここで下村さんが出すヒントや子供たちの感じ方などはかなり参考になると思います。
 たとえば「他者に対する想像力」の授業で下村さんは、「両極端作戦」「理由を想像する」などのヒントを提示します。これが本書で言う「スイッチ」でしょう。「情報に対する想像力」では、「立場を変えて見る」「順番を変えて見る」などの「スイッチ」が示されています。いずれも理屈ではなく、子供たちと体験しながらの提示なので、読者にもよくわかる説明となっています。

 教科書の「手引き」には、「事例と意見の関係をおさえて、自分の考えをまとめよう」となっています。とはいえ、実際には教科書の短い文章だけで「事例と意見の関係をおさえ」ることは、非常に難しいことでしょう。ただ、そこがきちんと捉えられないと教材の目的も、記述内容の理解もできません。
 著者である下村さんは専門家であるだけに、その不十分さを感じて本書を書かれたのではないでしょうか。そしてその目的は、かなりの部分達成されているのではないかと思いました。
 本書は情報とのつきあい方を子供たちにも分かりやすく説明しているだけでなく、この教科書を使っている地域の先生方にとっては、教材研究に役立つ一冊と言えるでしょう。教える前にぜひ一読されることをお勧めいたします。

動画が見られる写真 本書はメディアリテラシーを扱った書籍であるだけに、マルチメディア対応をしています。本書の中に配置されている写真には、QRコードが配置されていて、それをスマートフォンなどのQRコードリーダーで読み込むと、授業の様子が動画で見られるようになっています。これはなかなか面白い編集上の工夫だと思いました。
お役立ちポイント:★★★★☆
※このポイントは、学校教育との直接の関わり度合いを示しています。本の善し悪しを示しているものではありません。

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